介護保険による訪問介護サービスの利用について、わかりにくいと思ったことはありませんか。 以前は介護保険が利用できた家事代行的なサービスが保険適用外になるなど、昨年の制度改正以降、介護予防の導入などにより、介護保険の利用が難しくなったと感じている方は少なくないのではないでしょうか。
しかし実際は、介護保険制度のそもそもの基本方針は、制度改正前と何ら変わっていないのです。その証拠に、介護保険法には次のように条文化されています。
介護保険法 第一章 総則より
■第1条要約
サービスを提供する事業者については要介護状態或いは要支援状態になった方に持っている能力に応じて自立した日常生活が営めるよう支援などを行う。
■第4条要約
サービスを受ける利用者・その家族等については自ら介護状態になることを予防したり、要介護状態になった場合にも、持っている能力の維持向上などに努める。
では何故、多くの利用者が変わったと感じているのでしょうか。
2000年4月の介護保険スタート当初は、制度の普及(利用者の開拓やサービスの提供量の確保)を促進することが重視され、ややもすると基本方針が置き去りにされたむきがありましたが、それがかえって要介護者の親を持つ私たちのような利用者にとっては、多少融通が利いて比較的利用しやすい制度に感じられました。
ところが、昨年の制度改正を境に、効果の上がらないものや過剰なサービスを見直し、基本方針を重視したサービス内容にしていこうという動きが強まり、介護保険の適正利用が求められるようになりました。そして、これまでヘルパーにお願いできた家事を頼めなくなったり、ゆとりのあったサービス時間が削られて短くなったりした結果、以前から介護保険を利用している側は介護保険の利用自体が急に難しくなったように感じてしまう事態に陥ったのです。ですから、介護保険の見直しについて、ケアマネージャーやサービス提供事業者から説明や内容提示を受ければ受けるほど、制度も内容もすっかり変わってしまったのではないかと思っても無理はないのかもしれません。
利用者からみるとやや行き過ぎの感もあるかもしれませんが、高齢社会を支えてくれる若い世代にも制度を継続していくためには、利用者やサービス提供事業者、そして制度自体も、進み行く高齢社会に合わせて成長していく必要があるのではないでしょうか。
「求めているサービス」と「保険で提供可能なサービス」にズレを感じたときは、行政や事業者のサービス利用に関する説明や対応が不十分なことがまず考えられます。しかしその一方で、利用者ならびに家族である私たちも、保険利用できない不適正サービスを保険利用できるものとして求めてはいないか、改めて考え直す必要があるのではないかと私は考えます。介護保険を上手に利用するために、まずはルールの理解から始めてみましょう。
≪下記に、指定訪問介護サービスの中で、特にサービス利用にいろいろ制限がみられる家事(生活)援助の利用に関するルールの一部を掲載いたしました。≫
【家事(生活)援助の利用について】
- ①家事援助が利用できる場合
- ◆利用者が一人暮らしの場合
- ◆利用者や家族等が疾病等で家事を行うことが困難なとき
- ◆利用者や家族等が疾病等はないが同様のやむを得ない事情がある場合
- ②家事援助行為として不適正とされる例
- ◆商品の販売や農作業等生産の援助的な行為
- ◆直接本人の日常生活の援助に属さないと判断される行為(具体的には下表のとおり)
不適正とされる内容 | 具体的な行為事例 | |
---|---|---|
「直接本人の援助」に該当しない行為 | 主として家族の利便に供する行為又は家族が行うこと 適当であると判断される行為 | 利用者以外の洗濯、調理など |
主として利用者が使用する居室等以外の掃除 | ||
来客の応接(お茶出しなど)自家用車の洗車など | ||
「日常生活の援助」に該当しない行為 | ヘルパーが行わなくても日常生活を営むのに支障がないと判断される行為 | 草むしり |
花木の水やり | ||
犬の散歩等ペットの世話など | ||
日常的に行われる家事を超える行為 | 家具・電気器具等の移動、模様替え | |
大掃除、窓ガラス磨きなど | ||
家屋等の修理、ペンキ塗り | ||
植木の剪定等の園芸 | ||
おせち料理など、特別な手間をかけて行う調理など | ||
生活必需品以外の買物 |