~ 皆さんのところにも同じような事例はありませんか! ~
職員みんなが賠償事故についてしっかりした知識を持つことと、共通した対応を行うことが大切です。理解が徹底できないばかりに、思わぬ大きなトラブルになることもあります。
≪トラブル内容≫
“ある日、利用者から突然電話”がありました”
- 【利用者】
- 「○○ヘルパーさんが掃除をしていたら掃除機が動かなくなっちゃったの。もう古い掃除機だから良いよって言ったのだけれど。ヘルパーさんが、会社は保険に入っているからお話をしたらって、言っていただいたので電話をしてみました。」
- 【会社】
- 「初耳で、お恥ずかしい話、全く状況が掴めていないので、担当ヘルパーから状況確認をさせていただきたいので少しお時間をいただけませんか。また、後ほど、○○様のご都合も確認させていただき、壊れてしまった時の状況についてお話を伺いに行きたいと思います。掃除機はまだ捨てずにありますよね。その時に見させてください。」
- 【利用者】
- 「ヘルパーさんから聞いてないの。(壊れて一週間以上も経って掃除するのに不便だから)もう、掃除機は新しい物を買って、前の物はその時に引き取ってもらったわよ。領収書はもらっておいたけど、長年使って古いものだからヘルパーさんには良いよって言ったのだけれどね。」
“後日、別々に担当ヘルパー(2名)・利用者から掃除機が壊れてしまった時等の状況を確認しました”
- 【ヘルパーA】
- 「普段と同じ(特別な物を吸い込んだり、特別な操作を行ったりはしてはいない)ように(当該)掃除機で掃除をしていたら、モーター音が止まってしまって使えなくなってしまって・・・。いつもなら、コツがいるけど、掃除機本体の部分を軽く叩くと、また動いたりしたんですよ。そのときは、どうやってもダメでした。」
- 【ヘルパーB】
- 「(当該)掃除機は8年くらい使っているもののようで、私が使っている時も、最近、ときどきモーターが止まったりして、本体部分を軽く叩き様子を見ながら掃除をしていたわ。」
- 【会社】
- 「(ヘルパー)みんなの責任で壊れたんじゃなくて、掃除機の寿命じゃないの?」
- 【ヘルパーA】
- 「(利用者)○○様は高齢者世帯なので経済的負担がかかるのは大変だろうと思い、賠償保険を使えば会社にも負担を掛けず済むので、「保険の話」をしました。(利用者)○○様は、購入代金を支払ってもらえるかもしれないと思い領収書を大切に保管しているようですよ。」
- 【会社】
- 「これは、賠償事故ではないので“保険金”は支払われないわよ。今回の件を補償しようと思ったら会社側の負担で行うことになります。なおかつ、補償するということは、今回の件について、起こしてもいないことを会社側の賠償事故として認めたことになりますよ。」
- 【利用者】
- 「もう古い掃除機だから買替えはしょうがないと思っていたけど、ヘルパーさんが「ひょっとしたら保険で何とかできるかも。」との話をもらったので、保険なら会社に迷惑もかけず(新しい掃除機への買換え)できるかなと思って電話したのよ。」
≪対処≫
“利用者への対処”
◆ 事実関係を整理し利用者、会社双方にて確認し合う。そして、事実関係から判断して、当該掃除機の寿命であって当社ヘルパーの使い方などの問題による賠償責任は認められないことも確認しました。
◆ しかし、利用者の期待(もしかしたら会社が買換えをしてくれるのでは)を裏切ることとなり、気持ちが治まらない様子。色々な形でその影響が出ることが予測されたが、所長が菓子折りを手に訪問し「職員の再教育についての約束」することで納得していただきました。
“職員への対応”
今回の事例より「事故対応(事故処理の流れ)」「事故と賠償責任の関係」について全く理解ができていないので、再度ヘルパー研修に取り上げるとともに、職員向け広報紙にも掲載し徹底を図ることにします。
■事故処理の流れ
■事故と賠償責任の関係等
- ◆『賠償保険に加入している意味』
- 介護保険指定事業者として、会社職員の過失により損害を与えた事に対して十分な補償を可能にするため。
- ◆『保険金支払いが行われる時 』
- 過失(予防回避を怠った)が認められ、かつ被害者から損害賠償請求が有る時に限ります。
- ※ 従って、(過失)責任が認められない場合(今回の事例のように、物が古くなって寿命で使用できなくなったような場合)や被害者より損害賠償請求がない時は、保険金の支払いはありません。
- ◆『賠償と加害者責任』
- 賠償(保険金)支払いを実行するということは、当該事故に対する(加害者)責任を認めるということになります。