(1) 人と関わるのが好きです。
▲畑の風景が見られる事業所周辺。
―介護の世界に入るまでには、どのようなキッカケがあったのでしょう?
稲葉さん:初めは何となく、でした。たまたま知り合いに介護の仕事をしている人がいて、私もやってみようかなぁと思ったんです。それまで福祉関係の仕事をしたことはありませんでしたが、子供の頃から興味はあったので。
―こちらにお勤めされてどのくらい経つのですか?
稲葉さん:1年9ヶ月です。介護歴はトータルで6年ほどになりますが、以前ヘルパーをしていたのは10年以上も前のことですからね。また介護業界に復帰しようと決めたときは少し不安でした。
昔の介護については知っているけれど、今の介護業界についてはまだまだ勉強中の身。だから、事業所のスタッフは先輩ばかりなんですよ。毎日が勉強です。
▲サービス提供責任者同士の打ち合わせ。
―これまではどんなお仕事に就いてきたのですか?
稲葉さん:こちらの事業所に来る前は、友人に紹介された保育園の調理場で働いていました。家業の関係から将来役立つことを考えて若いうちに調理師の免許を取得していたんですが、それが役立ちました。職場は調理場でしたが、園児と触れ合う機会も多くとても楽しかったですよ。介護の世界とは全く違う環境でしたが、「人との関わり」という意味では共通するものがあるなって思いました。
―その保育園の仕事から、なぜ介護の世界にまた戻ろうと思ったのでしょう?
稲葉さん:名前も知らないお年寄りとの出会いがキッカケです。ある日、横断歩道の前で大通りを渡れずに困っているおばあさんがいたんです。ケガすると危ないと思い、声をかけて一緒に大通りを渡りました。そのとき何気なくつないだおばあさんの手は、ちょっとガサガサしているけれど何とも言えないやさしさがあって、とても温かかった。私のほうこそ引っ張られているような、包まれているような気持ちになりました。その出来事がずっと頭から離れず、もう一度介護の仕事をやってみようと思ったんです。
―これまでのキャリアが生きているなと思う瞬間はありますか?
稲葉さん:たとえば、利用者さんのお食事を作るときでしょうか。利用者さんの具合が悪いときは喉を通りやすいように離乳食のような食事(きざみ食)を用意するんですね。麺類は食べやすく切ったり柔らかく茹でたりしますし、薬味もいつも以上に細かく刻みます。また、利用者さんの体調に配慮して薄味にすることもあります。こういった食事の作り方は保育園で学んだこと。どんなことでも、無駄な経験なんてないんだなーと思いますね。
―過去の経験が今に活きているんですね。
稲葉さん:そうですね。利用者さんの喜ぶ顔が見たいから、もっとおいしい食事をつくりたい、利用者さんが食べたいと思える料理の工夫をもっと取り入れたいと思っちゃいますね。
―そう考えられるのは、素敵なことですね。
稲葉さん:いろんな仕事で経験してきたことが、今は全てつながっていると思えます。調理師の免許を持っていたから保育園の調理師にと誘われたわけですし、介護の仕事に復帰したら保育園で離乳食を作っていたことが役立っていますしね。
私はきっと、根っから人と接することが好きなんでしょうね。振り返れば、いつも人と接する仕事を選んでいますし。利用者さんの楽しそうだったり嬉しそうだったりする様子を見ると、私まで嬉しくなってやる気が湧いてきちゃう。つくづくこの仕事が好きなんだなーと思います。介護業界に戻ってきて、友達から「いい表情してるね」とか、「あなたにはこの仕事が向いている」なんて言われることが増えました。これはすごく嬉しい。私にとっては一番のほめ言葉ですね。