(1) みんなで向上、新しいことにチャレンジ。
▲利用者さんとのコンタクトに使用されている事業所の携帯電話。
―こちらでは、様々な新しい取り組みをされているようですね。
亀井さん:はい。一昨年から、夜間対応型の訪問介護や介護タクシーを始めました。それと、研修センターでスタッフの勉強会も活発に行っています。
―まず、夜間の訪問介護について教えていただけますか?
亀井さん:介護保険適用外の部分もありますが、深夜でもヘルパーを派遣できるサービスです。利用者さんは緊急事態が発生したら、ペンダント型のコールで事業所にいつでもコンタクトできます。その連絡によってヘルパーは急行しますが、夜中だと家の鍵を閉めているから中に入れず対応ができません。そこで合鍵を保管するためのキーボックスを置いてもらうんです。コールとキーボックスのどちらも、無料で貸し出ししています。
まだ月の対応量は数回程度と少ないので、今は採算ラインを見ながらやっているところですね。介護に時間は関係ないですから、今後は利用者さんが増えてくるのではないでしょうか。
―介護タクシーのほうも教えてください。
亀井さん:こちらは車椅子や寝たままの移動が可能で、通院などに使用されています。介護度が低い人は一般のタクシーを使えるので使用できないといった難しい面もありますが、八王子という広い土地柄もあって利用される方は結構いらっしゃいますね。今日も約80件の予約で埋まっているんです。介護タクシーのドライバーはヘルパー2級の免許を持っているから、安心してもらえるんじゃないでしょうか。
▲寝たきりの利用者さんも、そのまま移動が可能だ。
―スタッフの勉強会とはどんなことをしているんですか?
亀井さん:技術レベルを整えることやお互いを高め合うことを考えて、自分たちで授業をしています。勉強会は昨年から始めたばかりですが、結果につながればと思い続けているんです。
―相乗効果が期待できそうですね。
亀井さん:ええ。例えば自己評価表もその1つです。これまでのヘルパーさんは、経験者も新人も同じ時給でした。それに対する不満はもちろん出ていたので、評価表の得点によって昇給することが検討されています。
これからはヘルパーさんを大事にする時代ですからね。私たちの事業所では、社長が給与明細を手渡す際に仕事やプライベートの相談ができるんです。それに対し、会社側はできる限り対応します。社長は、女性ならではのキメ細やかな配慮を怠りません。それがヘルパーさんの定着している理由かなあと思っています。私自身も、社長を尊敬しています。
▲デスクワーク中の亀井さん。
―積極的に改善策を打ち出しているんですね。
亀井さん:変化の激しい業界なので、新しいことにチャレンジしていかないと取り残されてしまいますから。あと私たちの事業所では、多くのスタッフと利用者さんを管理するためにチーム体制という独自の方法をとっています。普通、利用者さんを担当するサービス提供責任者は1人ですが、私たちは数人で情報を共有。これで、昨年の監査はクリアしたんですよ。介護保険制度とにらめっこしつつ、最善のサービスを提供していきたいですね。
(2)男性ヘルパーは必要、心の安心を届けたい。
―規模が大きいと男性スタッフも多そうですね。
亀井さん:いえいえ、スタッフ全体の一割にも満たないんです。男性ヘルパーは常に募集しているけれど、応募数は少なくて。それに採用が決まっても続かないことだってあります。だから人手不足のときには、男性のサービス提供責任者やタクシードライバーが訪問介護へ入るようにしているんです。
▲同僚とランチ。仕事帰りのゴルフも一緒に。
―男性ヘルパーが重宝されるのは、どんなときですか?
亀井さん:介護度の重たい人で、パワーが必要な身体のケアサービスです。同じヘルパーとはいえ、やはり男女では技術面での違いがあります。体型が違うから、かがむ動作1つにしても女性なら10cmのところを男性は20cmもかがまなくてはなりません。しかし男性ヘルパーは片手で利用者さんを支えることが可能であれば、同時に他の作業もできます。とくに男性の利用者さんは男同士だと遠慮なく話せることもあるし、入浴介助も気を使わずに済むと喜んでいただけているようですね。
―女性のヘルパーさんから学ぶこともありますか?
亀井さん:もちろんです。新しい発見があれば、それを自分なりに工夫しています。ヘルパーさんには女性の方が比較的多いですが、介護はする側もされる側も男女を問いません。男性ヘルパーが少ないからこそ、男性側の視点を発信したいという気持ちが強いですね。
▲女性スタッフと打ち合わせ中の亀井さん。
―なぜ男性ヘルパーさんが少ないと思いますか?
亀井さん:一般的に一家の大黒柱とされる男性には不安定な職業だからでしょう。常勤となれば話は別ですが、ヘルパーさんは時給制なので収入面の問題が出てきます。それに加え、活動面でも最初の訪問が朝で次の訪問が夕方になってしまうと、日中に空きが出てしまう。かといって1日拘束されるから、兼業や副業が難しいという効率の悪さもあるんです。
私がヘルパーを始めたときの訪問は、1日に1~2件で月8万円からのスタート。2年目で15~20万円くらいでした。当時は実家住まいでゆっくり仕事をしたかったから何とか続けられましたが、自分の生活も考えるとなると厳しいかもしれませんね。
―どうしたら男性ヘルパーは増えると思いますか?
亀井さん:ヘルパー職の地位向上と、報酬制度を整えることではないでしょうか。体力面でのニーズは間違いなくあるので、男性が増えていく環境になってほしいです。