■「人に優しく」が母の口グセでした。
▲利用者さんと一緒に植えたという植物の隣で2ショット撮影。
―山本さんは、1日に何人くらいの利用者さんをケアしているんですか?
山本さん:私の場合はデスクワークもあるので、ヘルパーとしては1日に平均で3~4件くらいの訪問です。ヘルパーさんによっては1日に5~7件入っている人もいます。
―「サービス提供責任者」という立場で、心がけていることはありますか?
山本さん:新規の利用者さんには、必ずヘルパーとして入るようにしています。現場に出ないと分からないことが多いですからね。
あと、利用者さんを担当するヘルパーは、なるべく変えないほうがいいなと思っているんです。いつもと違うヘルパーさんが対応して拒絶反応を起こしてしまう統合失調症や認知症の方もいらっしゃいますし、入浴介助では裸になるので気心の知れた仲であることが大切になってきます。国の指導では半年から1年でヘルパーを変えることになっていますが、新規で来られる方のなかには、ヘルパーを変えたくないと希望される場合が多いんですよ。利用者さんやご家族からすれば、家の中に家族以外の人間が入ってくるわけですから慎重になりますし、ヘルパーさんを変えるたびに状況を説明するのも大変でしょう。だから私たちの事業所では、あまり変えないようにしています。
▲冷蔵庫の材料を見ながら、食事のメニューについてヘルパーさんと話し合う。
―これまでに関わってきた利用者さんで、印象深い方はいますか?
山本さん:はじめのうちは言葉づかいがとても乱暴だったんですけど、毎日通っているうちに少しずつ心を開いてくれるようになった、ある利用者のおじいちゃんですね。親しくなっていくと、「一生懸命やらないかん」「手を抜いたらあかん」と言ってくださるように…。このときは、自分から相手を好きになることの大切さを痛感しましたね。私の母は昔から、「嫌われている人ほど、優しくせなあかんよ」と言っていました。母の言葉がずっと胸の奥にあったから、おじいちゃんとも仲良くなれたのかなぁと思いますね。
―山本さんの思う優しさとは何でしょう。
山本さん:いつでも利用者さんと「つながれる状態」であることが、私の考える優しさですね。人って、困ったときや助けがほしいときこそ、頼りにしている人とつながりたいと思うものだと私は考えます。だから、いざというときに手をさしのべられるようスタンバイして、いつでも動けるようにしていたいんです。「何かあったら山本さんに…」と思っていただけたら嬉しいですね。それぞれの利用者さんに合わせた対応をするために、いつでも「窓口」を開けておきたいんです。