■「介護」が面白くなったのは3年目から、そしてより現場に興味が沸きました。
―石原さんは、介護のお仕事を始めて10年だそうですね。
石原さん:はい。でも訪問介護に携わったのは「ふそうケアサービス」が初めてで、まだ訪問介護歴は1年目なんですよ。
▲サービス提供責任者同士でパソコンに向かいながら、何やら話し合い中。
―どのような経緯で介護の世界に入ったのですか?
石原さん:療養型の医療施設で、「ワーカー」という一般病院の看護助手のような仕事に就いたのが始まりです。2人の息子を預けられる保育施設のある職場を探していたところ、たまたま求人票を見つけたんですよね。
その病院では、医療行為以外のトイレ誘導や食事介助など、患者さんの生活全般のお世話を行っていました。介護は未経験だったので、「おしめ」という言葉が年上の方には失礼にあたることも知らないほどで……。実務を通して一から勉強するような状態でしたね。
▲道に迷いやすいという石原さん、利用者さん宅の地図はすべてファイリングしている。
―戸惑いも多かったのでは?
石原さん:先入観がなかったことですんなり環境にとけ込めたのですが、やはり一人前に仕事ができるようになるまでには、時間がかかりましたね。新米の頃は、体位交換される患者さんの身体を触らせてもらえない状態で、「(痛いから)来なくていい」と言われていました。でも、そのまま引き下がるのは悔しかったため、看護師さんや他のワーカーさんの後に付いていき、患者さんに痛い思いをさせない体の動かし方を観察しました。
1年くらい経った頃でしょうか、ナースコールが鳴ったので病室を訪れると、いつものように違う人を呼ぶよう促されるのかと思ったら「右側臥位(がい)にしてくれ」と言われたんです。思わず「え?」と聞き返してしまいました。「早く」と言われ体位交換し終わったとき、患者さんから「合格」と小声で言われたんです。このときは私もようやく認めてもらえた気がして、泣きそうなほど嬉しかったですね。
介護の面白さに気づくまでには3年かかりましたが、その後病院で8年ほど経験を積むと、より深く人と関われるような、病院とはまた違った介護職に就きたいという気持ちが大きくなってきたんです。
>▲「こういうブログがあるんですよ」と、いつも見ている介護者のブログを見せてくれる石原さん。
―そしてデイサービスに転職されたんですね。
石原さん:相談員をすることになりました。病院内でもデイケアやショートステイに来られる方と関わる機会は多くありましたが、デイサービスは、お年寄りの社会交流や引きこもりを防ぐことが目的の場所でしたから様子がぜんぜん違い、たくさんの発見がありました。
いちばんの発見は「会話」です。入院されている方と在宅の方とでは、その内容がずいぶん違っていました。病院で寝たきりの方や認知症の方のお世話をしていた頃は、自分から積極的にお声をかけるようにしていたのですが、在宅の皆さんは「私はこういう食べ物が好きで、家ではこうやって食べるのよ」とか、「この服のこの色が好きなの」など、話しかけてくださるんです。病院しか知らなかった私にとって、より利用者さんの生活に近い介護の現場に触れられた経験は、とても良い刺激となりました。
―もしかして石原さんは、その刺激を受けて訪問介護に移ったのですか?
石原さん:そうなんです。在宅のお年寄りとの関わりが増えるほどに、もっと身近な場所でお手伝いをしたいという気持ちがどんどん大きくなってきたんですね。だから現場に密接した今の仕事に就けて、充実した毎日が送れていることに感謝しています。