■スタイリッシュでありながら「品質」を心がけた介護サービスを意識しています。
▲事業所内は、置く物にこだわりスタイリッシュさを演出している。
―こちらの事業所「Quare(クオレ)」は、スタイリッシュな介護を目指しているそうですね。
向井さん:はい。介護は、重労働なのに低収入と思われがちなので、まずはそのイメージを変えたいという気持ちで私たちはやってきています。 「自分の家族に受けさせたい介護」を目指しているんです。
―例えばどんなところで、家族に受けさせたいスタイリッシュな介護を意識しているのですか?
向井さん:まずは事業所の中ですね。忙しさのあまり、資料であふれかえるような雑然とした空間を取り払うために、植物を飾ったり家具にこだわったりして、いつお客様がいらしても気持ちがいいように清潔感を大事にした雰囲気作りをしています。また利用者さんを訪問させていただくときも、ヘルパーさんの出入りを気にされるお宅があることを考え、スタッフのユニフォームは元気な印象の黄色のポロシャツで統一し、Tシャツやジャージ、ジーンズは厳禁としています。利用者さんのケアに当たる際には、食事介助はピンク、身体介護はグリーンのエプロンと分けていますし、ソックスも一件の訪問につき一足と履き替えを徹底しています。
「うちは『Quare(クオレ)』から来てもらっているのよ」と、利用者さんに誇りに思っていただけるようなサービスを提供したいと思っているんです。利用者さんの満足を第一に考えられるような、質の高さを大事にしていたいです。
▲電話対応中の向井さん。黄色のユニフォームが明るい雰囲気を醸し出す。
―他にも質を大事にするために行っていることはありますか?
向井さん:ヘルパーさんの質はサービスに直結するところなので、クオレのヘルパーさんの採用率は30%程度です。厳しく人選させていただくのは、私たちも一緒に勉強しながら成長していきたいという思いがあるからです。ですから、「自分で考えて行動できる人」を採用基準のひとつとさせていただいています。それから人と関わる職業ですので、人柄も大事になってきます。利用者さんを優先できる方であるかもポイントです。2年かけて、ようやく採用方法の土台ができました。それから資格取得後にブランクのある方でも、お仕事を始めやすいような環境も整えているんです。
―お仕事を始めやすい環境づくりとしては、どんなことをなさっているのでしょう?
向井さん:資格があっても現場経験の少ないヘルパーさんが無料で受けられる、「ペーパーヘルパー講座」を設けています。実践がないのに、いきなり訪問することになっても戸惑うばかりですよね。しかも、お店のパートなどに比べて人の体にも触るというリスクの高い仕事にせっかく目を向けていただけたので、初心者の方が学べるチャンスを提供できればという思いから始めたんです。他にも料理講座やマナー講座なども行っています。
>▲事業所の入り口には商店街を通る人々に呼びかけるメッセージが。
―その講座について教えてください。
向井さん:料理講座では、味つけの加減や、高齢者が食べやすい材料の切り方などを指導していきます。またマナー講座では、挨拶の仕方やコップの差し出し方や配膳の仕方など、利用者さんへの礼儀作法を外から来ていただいた先生に教えていただきます。
ヘルパーは家庭内の家事と同じことをすればいいと思われがちですけど、家の中にいて一人で行う家事が一般的かどうかを評価するのは難しいですよね。ヘルパーの経験を積んでいるとしても、正しいやり方ばかりとは限りません。自分を見直すためにも必要な機会だと思っています。
―こちらの事業所は、新しいことに次々と挑戦していて、とてもエネルギッシュですね。
向井さん:ありがとうございます!毎年秋になると、季節の変わり目の体調不良を予防するために旬の食材を使った「収穫祭」というイベントも行っているんです。材料に制限を設けて、どんなおいしい料理ができるかをヘルパーさん同士でアイディアを出し合って作ります。このイベントには、お仕事で関わりのあるケアマネージャーさんや利用者さんも参加されて、普段の皆さんのアイディアを交換する場にもなっています。こうした交流の場は事業所内だけではありません。大田区限定の「大田北高齢者見守りネットワークをつくる会」に参加し、地域の方々とも盛んに交流を行っているんですよ。私たちの事業所は決して大きくないですから、外部とのコミュニケーションによって支えられているなあと、常に感謝の気持ちを持っています。