ひとつ屋根の下「ひつじ雲」について
夢のようなサービスなのにあまり認知されていないのが残念です
玄関までの小道には植木やお花が。友達のお家に遊びにきたような感覚にさせてくれる。
―「ひつじ雲」では小規模多機能型居宅介護という4年前の法改正で新しくできたばかりのサービスを導入しているんですよね?まずは、そのサービスについて詳しく教えてください。
髙橋さん:高齢者を対象とした地域密着型の介護です。他との一番の違いは、「通い」「訪問」「宿泊」の3サービスを1つの事業所で受けられること。
24時間スタッフが常駐しているため、利用者さんの微妙な変化にもすぐ対応でき、365日行き届いた介護サービスが状況に合わせて提供できるのもここならではないでしょうか。さらに、そのサービスが、法律で定められた料金(月額)でまかなえるんですよ。
―そうなると、その分費用もかなり高いのでは?
髙橋さん:いいえ。想像よりもはるかに安いんです。料金の9割が介護保険から給付されるので、利用者が支払う料金は1割!
もちろん介護レベルにあわせて多少の差はありますが、それでも安い。でも安いからといって、質の高さは他と負けていません。いや、それ以上ですよ。
利用者さんの定員数も少ないので、職員が必要な状態なら1対1での対応も可能なので、ご家族の方にも大変信頼を寄せていただいています。
―私も今回取材させていただいて、夢のような介護施設だ!と感じました。さぞかし登録を希望される方が多いと想像しますが。
髙橋さん:いや、それがそうでもないんです(苦笑)。まだまだこのサービスの認知度が低く、世間一般に広まっていないこともあるのかもしれません。毎日ここの前を通る方ですら、介護や施設の内容を知らず、ご家族が利用されて初めて、『こういうことをしていたんだ!』と知る方もいるぐらいですから。そこで、私たちは昨年から新しい取り組みを始めました。
―というと?
髙橋さん:町内会館を借りて、月2回ほど地元に住む高齢者の方と食事会を行っています。地元の方と交流を深めたい、サービスについてもっと多くの人に知ってもらいたい、という想いからです。「ひつじ雲」の近くに住んでいる65歳以上の方であれば誰でも無料で参加ができ、外へ出る機会が減ってしまった方の引きこもり防止にもつながるなど、参加された方々には好評です。
―実際にその活動が実を結んでいると思われますか?
髙橋さん:そうですね。食事会をきっかけに、見学に来られた方や登録にいらっしゃった方もいます。私たち事業所の活動内容を知ってもらうよい機会であると同時に、地域の方とのコミュニケーションがとれる大事な場でもあります。地元に根付き、当たり前に存在する「ひつじ雲」でありたいですね。
おいしいご飯、手作りおやつ・・・・・・。あったかい雰囲気が自然と生まれますね
玄関には手作りの表札が。ドアを開けるとチリンチリンとなって利用者さんの来訪が分かるシステムに。
―「ひつじ雲」は普通の一軒家のお宅ですね。表門には個人の方の表札もあり大変びっくりしました。これにはこだわりが?
髙橋さん:民家を借りて、そのまま事業所として使わせてもらっています。自ずとアットホームな雰囲気が出てるでしょ(笑)?
日々、「通い」や宿泊利用で多くの方が出入りします。職員だけでもかなりの人数がいます。利用者さんがこの家に一歩足を踏み入れたら「第二の我が家」に帰ってきたような気持ちになってほしい。一瞬にして「落ち着く、安心できる」。そんな空間づくりを職員一同心がけています。
今日のメニューは利用者さんの見える場所に。台所では従業員の方がおやつを手作り中。
―確かに温かい空気に包まれて、自分の家にいるかのようにくつろげますね。
しかも、台所からはいい匂いがして…。
髙橋さん:そうなんです!
ひつじ雲では創業当初より特に食事に力を入れていて、毎日メニューを貼り出しているんですよ。一般家庭と同じような台所で食事をつくるので、何を作っているのか覗き見できるうえ、美味しそうな匂いが部屋に充満。利用者さんの食欲をそそる効果もあります(笑)。
また、もうすぐ「ご飯の時間なんだ!」と時間を感じてもらうのにも一役買っていますね。
―おやつも手作りなんですよね。しかも毎日のことだとか。本当に美味しそうで私も食べたくなりました(笑)。
髙橋さん:そう言っていただけると嬉しいですね。献立を作成するのは管理栄養士の資格を持つ方なので、カロリーや栄養バランスに十分配慮していますし、利用者さんが飽きないようバリエーション豊富なメニューであることは本当に自慢です。
和やかな雰囲気のなか、好きな歌を合唱♪手作りの歌本を読みながら、時には手拍子も。
―利用者さんが一緒につくることも?
髙橋さん:キノコをほぐしたり、インゲンのすじを取るなど、ところどころ手伝ってもらうこともあります。これは手先の運動にもいいですよね。また、ホットケーキをおやつに作るときはホットプレートを食卓において、みんなで楽しみながら作ることも。
色々な人と一緒に作業をするというのはコミュニケーションも活発に生まれるので、とてもいいことだと思います。
―その他、利用者さんはどのように過ごされているのでしょう?
髙橋さん:お手玉をしたり、歌の本から好きな曲をみんなで歌ったり・・・・・・。一方、台所横で読書をしたり、お昼寝をする人も。私たちはそれぞれ利用者さんのペースや過ごし方を尊重しながらのケアを心がけています。
―みなさん、家にいるかのようにリラックスしていますね?
髙橋さん:いつも賑やかな話し声が絶えないですね。利用者さんは顔なじみの方ばかりなので安心して過ごせるということもあります。涙を流す人がいれば、慰める人がいる、面白いことがあったら、お腹を抱えて笑う、そんな雰囲気のなかで充実した時間を過ごしてもらえるための最大限の努力をする!
それが、私たちの仕事であり、やりがいでもありますね。