Q : 訪問介護の昔と今、どう違う?
A : ご利用者さんが少しでも長く自宅で暮らせるよう手助けするという部分は今も昔も変わりません。
真剣な眼差しで資料に目を通す河内さん。
―河内さんはヘルパーの仕事につく前、自宅で美容院を経営しながら20年間美容師をされていたということですが、何がきっかけでこの仕事につかれたのですか?
腕を悪くしまして・・・。職業病ですかね。医者に違う筋肉を使えば治ると言われたんです。やはりこれからも元気でいたかったので、すぐに決断して10日ぐらいでパパパッと仕事を辞めました。その後、紆余曲折経て、ヘルパーの資格を取得した・・・という感じでしょうか。
―すごい決断力ですね。
そうでしょうか(笑)。その時はちょうど子供も大きくなりまして、目の届く範囲に置いておかなくても大丈夫、というのも大きかったのかもしれません。自分の仕事について考え直すよい機会と思い、わりと悩まず決断できたんですよ。とはいえ、食べていくために何か仕事をしなければいけない・・・ということで、清掃の仕事をしてみたり、厨房で働いてみたり。そうやって様々な仕事を経験していたなかで、補助看をしていた時期がありました。今思えば、そこで参加した認知症のグループ研修で起こった出来事が、ヘルパーという仕事に興味をもつ、そもそものきっかけだったのかもしれません。
常勤、非常勤あわせた人たちのタイムスケジュール。予定がびっしり。
―介護とは言いながらも、人間同士のお付き合いだからご利用者さん側からも相手を見る・・・といった意識はどうしてもありますよね。きっと河内さんの行動を見て、患者さんはとても安心できたんでしょうね。この人なら大丈夫!と思える何かがあった・・・だから笑顔になれたのかなって思います。
その方とはそれっきりだったんですが、笑顔になってもらえたことがとにかく嬉しかったです。
―で、その出来事をきっかけに介護に興味をもたれて、ヘルパー2級の資格を取得されたということですが、取得間もない13年前と今とでは仕事に違いなどありますか?
あの当時は介護保険法が成立したばかりで、日々手探りな状況でした。今のような「これはダメ、あれはダメ」といった規制がなかったので、出来ることを何でもしていたと思います(苦笑)。ご利用者さんにとっても、ヘルパーと家政婦さんって何が違うの? って思われていたんじゃないでしょうか。でも今は、介護保険法で定められた範囲内の介助なので、だいぶ仕事内容は変わったと思います。
カラフルなカラーのファイルに資料を整理整頓。すぐ目に入ります。
―昔のような、出来る限りの範囲をやってみよう、という状況と今のように制約があるなかで介護するのとでは、どちらがいいんでしょう? 規制があるせいで、してあげたいことがしてあげられない・・・というようなもどかしさもあるのかな?って思ったのですが・・・。
確かにそういう気持ちはなくもないですが、やはり今のほうが全然働きやすいです。「すみません。これはヘルパーの仕事ではないんですよ」ってきちっと線引きすることが出来る。ご利用者さんにとっても理解しやすいっていうのもありますね。また、私以外の人間が介護に入ることもあるので、そういう時に「あの人はやってくれたのに、あなたはしてくれないの?」といったトラブルも避けられます。私がやってあげたいと思ったとしても、後にケアに入るスタッフのことを考えて、出来ない範囲のことは頼まれてもきちんと断るようにしています。これはすごく大切なことだと思いますね。
―なるほど。そう考えると、昔は苦労しながら、試行錯誤でご利用者さんと接していたんでしょうね。
そうですね。分からないなかやってみて、ご家族の方に怒鳴り込まれたこともありましたよ(苦笑)。でも不思議と大変だ・・・とか苦労した・・・って思ったことはあまりありませんね。その時その時を一生懸命やってきただけです。ご利用者さんみんな、自分の家で介護されたいと思っているんですよ。そういう方たちが1日でも長くご自宅で暮らせるよう、ほんの少し手を貸して差し上げる、これが私たちの仕事だと思っていますね。