介護の仕事に就くきっかけとは
おむつ交換など地味な仕事ながら、患者を穏やにする存在にときめきました。
すれ違う人全員に挨拶する黒川さん。 笑顔にパワーがあります!
―黒川さんが介護の仕事に興味をもたれたのは、第一子を出産された20年ほど前にまでさかのぼるとお聞きしましたが……。
はい。出産時に私の側にいてくださった看護師さんが、本当に誠心誠意尽くしてくださる方で。医療技術以外の精神的な部分でも、ものすごく支えられたんです。その姿に感動して「私がやりたかったのはこの仕事だ!」って。
和やかな雰囲気の職場には、日光がさんさんと降り注ぎ、いい気持ち。
―では最初は看護師になりたかったと?
そうなんです。准看の専門学校受験に必要な教科を調べて、押入れの奥から英・国・数の教科書をひっぱり出し、早速勉強を開始したんですよ。「来年からは私は絶対看護学生♪」と気合いも十分だったのですが、そんな折、父が脳梗塞で倒れたんですね。そこで、新たな出会いがあり、介護の方へと方向転換したんです。
伝達事項や献立などを確認しやすいようボードに張り付けてあります。
―その出会いとは?
父の入院先でお見かけした看護助手さんの存在です。ゴミ掃除にシーツやおむつ交換など、雑務をこなしながら父に安心感を与えてくれる彼女の仕事ぶりに目を奪われました。何より、父も嬉しそうに会話していましたね。一方、看護師さんは「食事は?お小水は?」とどこか義務的な雰囲気がして……。その瞬間、『注射を打って患者を治すよりも、便の処理をする方が断然いい!』と思えたんです。
みんなの憩いの場。大きな机を囲んでトークに話が咲きます。
―その方はきっと、患者さんの心のケアという部分に自然と貢献されていたんでしょうね。そこで、黒川さんの気持ちが切り替わり、介護の仕事をスタートされるまで10年ほどブランクがありますが、その間はどうされていたのでしょう?
施設で働くには夜勤がつきものなので、ちょうどその時2人目の子供が生まれたばかりの今はダメだろう…と。「いつか絶対にやるぞ!」と密かに想いをしたためながら育児をしていました。
『みやびの里』では温泉に入れます。今週は栃木県の田沼温泉!
―お子さんを保育園に預けられる年齢になった頃から、ようやく自分のやりたいことを始めるぞ! と行動開始されたんですか?
はい! 子供に三つ指ついて「お母さん、夜勤とか色々ご迷惑をおかけするかもしれませんがいいでしょうか?」と一応了解も得ました(笑)。
ご利用者さんの書初めを展示。ほかにも様々なものが飾られてます。
―地域の人とのコミュニケーションが希薄になるなかでこういうエピソードは心温まりますね。人に頼るということは、逆に人との絆も深めることにもつながるのかも……。
そうですね。今までの人生、いつも何か私に教えてくれたり、振り返らせてくれるような方々との出会いだらけです。