病院での10年間、そして有料老人ホームから訪問介護へ
100人いたら100通りの介護がある
釧路空港から事業所に向かうまでの車中からみえるのは見渡す限りの大自然。
―滝田さんがここ『ヘルパーステーションはまなす』にいらしたのは、最近だそうですね。
はい。今年(2012年)の1月に異動してきたばかりなんです。最初の3ヶ月は研修&見習い期間だったので、実務的作業は4月から。訪問、管理者、サービス提供責任者の3役を兼任しています。まだどれも手をつけはじめたばかりなので中途半端な感じがしますが、まずは訪問の現場を理解することが先決だと思っています。現場をよく理解していない人が指導…といっても何だか浅い感じがしてしまって…。言葉1つとっても、相手に響いていかないんじゃないかなって思うんです。だから今は何より多くの訪問現場を経験し、自分のなかで納得できる部分を増やしていくことが重要かなと感じています。
小スペースながら、きちんと整理整頓された玄関。
―介護経験15年の滝田さんにとって、訪問介護の現場は初めてとうかがいました。
そうなんです。最初の10年は病院の慢性期、急性期病棟で介護福祉士として、その後有料老人ホームに異動して4年ほど。正直、こちらに来るまで、訪問介護って掃除して料理つくって…いわゆる家事メインのケアイメージがあったんですね。家事が苦手な私にそれができるの?という不安と、それって果たして介護といえるのだろうか?という疑問視みたいな先入観もあったので、異動命令がでたときはすごく悩みました。立ち上げから関わった有料老人ホームでやるべきことが色々みえてきた時期でもあったのでなおさらです。でも、その思い悩んだ分だけ、次に頑張る原動力に変えていかなくちゃ、と無理やり気持ちを切り替えることにしました(苦笑)。
報告&確認するスタッフと滝田さん。自然光がさす気持ちのいい事務所内。
―新しいことにチャレンジする時は誰しも思い悩みますよね。ここに異動されて何か心境の変化はありましたか?
訪問に入った当初は、「男一人で調理ができないから作って!」というご利用者さんがいて、びっくりしました。これが『在宅ということかー』と。それまで私が経験してきた介護の現場では本当に人の手を借りないと生きていけないような方たちがほとんどだったので、そのギャップに混乱してしまったんですよね。でも今では『生活を援助する』という広い意味での介護と捉えれば、掃除や料理、おむつ介助も同じことなのかな、と思うようにもなりました。
経営母体でもある星が浦病院は、事業所のすぐ側に併設。
―介護、と一言でいっても様々なアプローチがありますしね。
本当にそうですね。まだ病院で働きだして間もない頃「介護はね、100人いたら100通りの介護があるんだよ」ってある方に言われたのを今でも思い返します。その時、心にすーっと染み込んだその言葉が、今までのあらゆる介護場面で私を支えてくれている気がしますね。
実習に来ていた学生さん。二人とも笑顔で挨拶してくれました!
―今まで滝田さんが経験された介護と比べて、訪問ならではだな、と感じることってありますか?
訪問は1対1での介護になるので、自分で判断しなければならないことが段違いに多いです。例えば、体調の悪そうなご利用者さんがいらしたとき、「少し休めばよくなる」なのか「ケアマネージャーを呼んで病院に連れていくべき」なのか。そうした見極めはいまだにすごく難しいです。判断を間違って取り返しのつかないことになったらそれこそ後悔しますし…。今まで長く働いているスタッフの情報を随時聞きながら進めるようにしています。
訪問車は、ブルーの塗装に白い印字で遠くからも目立つように。
―その見極めについては、どんなに熟練された方でもやはり難しいのでしょうね。
そういう場面に立ち会うと、まだまだ自分の未熟さを痛感します。特に訪問は、ご利用者さんの生活スタイルがベースにあるので、こちら本位に進めるわけにもいきませんし。小さな気付きも逃さないように注意を払っていくことが大切ですね。未熟な分だけ学ぶことも多く、難しいからこそ、やりがいでもあります。